【在宅介護と園芸療法】在宅の強みを活かして家庭菜園で認知症を予防しよう!

みなさんこんにちは。今回は、介護生活でテレビ以外の生きがいが見つかりづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。かと言って、外出できるほど体も動かせないことも介護生活をしているとあります。今回は簡単に取り入れやすく心にも身体にも良い家庭菜園をご紹介します。

高齢者にとっての「生きがい」とは

内閣府によると、生きがいを感じている60代~70代は8割、80歳以上でも7割以上に上ります(高齢者の地域社会への参加に関する意識調査)。この調査内で生きがいを感じるタイミングとして、健康状態が良い高齢者にとっては趣味を楽しんでいる時間(52%)、家族・友達との食事や雑談をしている時間(48%)です。一方、健康状態が良くない高齢者は、テレビなどのメディアを楽しんでいる時間(48.9%)、家族との団らんの時間(45.8%)に生きがいを感じると報告されています。 テレビを見ることでなにか脳への影響はあるのでしょうか。意外な落とし穴かもしれません。

テレビの見過ぎで認知症になりやすくなる

2017年の全国視聴率調査によると、10代・20代のテレビ視聴時間が1~2時間に比べて、70代は5~6時間になることが分かりました。6時間の視聴時間ということは、起きている時間の半分以上をテレビを見ながら過ごしていることになります。そのうちの29%の高齢者はテレビに「世の中の動き、出来事を理解する情報材料」としての役割を求めていることがNHKの調査で分かりました。

テレビは受動的に情報を受け取れるので、積極的に考える必要がなくなり、認知症などの原因にもなってしまう可能性があります。また、後期高齢者においては、身体の衰えや加齢による認知機能の低下なども重なり、テレビ視聴番組の視聴頻度と生活機能の程度との相関関係が見られます。

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趣味・人間関係に対する高齢者の高いモチベーション

2020年の労働政策研究・研修機構の老後の不安に関しての調査によると、「生きがい、やりがいを見つけられるか」は、大いに不安・やや不安と答えた人がお金に対しての不安の次に多く、45.7%となりました。「時間を持て余す」ことに関して 大いに不安・やや不安と答えた人 は35.4%いました。

また、同様の研究内で、「定年退職後にどの程度取り組みたいか」に関して、趣味・余暇に対して熱心に取り組みたい・ある程度取り組みたい人は77.8%、家族・家庭生活に対して熱心に取り組みたい・ある程度取り組みたい人は70.6%であることが分かりました。

こういった調査結果から、生きがいを仕事以外にどう見つけるか、時間を持て余してしまうのではないかと不安に感じている高齢者が多いことが分かります。また、定年退職後に趣味や家族のための時間を大切にする人が多いことから、より生きがいに「自分の好きなこと、周りの人とのコミュニケーション」を置いている人が多いことが分かります。

そんなとき、身体の動かしづらい高齢者にオススメしたいのが、園芸療法の一種である「家庭菜園」です。インプットしがちな脳から、植物を育てるという自発的な行動をする脳に切り替えることが、楽しみながらできるでしょう。

園芸療法

園芸療法とは、自然や植物の快適な刺激を活用してストレスを軽くしたり、植物を育てることや植物を活かした美術活動に繋げる活動によることで、生活意欲の回復や生活改善を目的としています。医療や福祉分野などのさまざまな領域で、人々の幸福を園芸を通してサポートする活動です。

家庭菜園のメリット

植物の成長を感じられる

まだ収穫できない成長過程から、水を与えたあとに植物が生き返ったり、緑色が褪せ始めた植物に肥料を与えて元気よい緑色になったりして、手入れの成果が感じられます。また、自分で育てた植物をフラワーアレンジメントや生け花、押し花などの作品を作ることができ、成果が見えやすく、より園芸活動を楽しめるようになります。

家庭菜園で植物の成長を感じる

喜怒哀楽を感じられる

植物の緑を見てホッとしたり、落ち着いたりすることで癒されます。真っ赤なバラを見て元気が出てくることもあります。種子から芽が出てきたときや、地中で冬を越した球根が春に芽吹いてくると喜びを感じたり、すくすくと成長していく植物の力強さに元気をもらえることもあります。台風が来たことによって、今まで丁寧に育ててきた植物が全部なぎ倒されて自然に対して怒りを感じたり、花の季節が終わり、少し哀しくなったり。嬉しい感情を味わえるだけでないのも、園芸の魅力ですね。

家庭菜園で喜怒哀楽を感じられる

五感で楽しめる

植物の香り、触ったときの感触、口に入れたときの味わい、そよ風による葉っぱどうしの擦れ合う音などが心地よさを感じさせてくれます。また、季節の移り変わりで、成長する植物も変わり、葉っぱの色彩も変化し、視覚からその多様性を感じられます。これによってストレスやもやもやした感情を解消することに繋がります。

家庭菜園で五感を使おう

自分が必要であるという責任感を得られる

萎れた植物が水やりによって回復したとき、日々の手入れが欠かせない植物の栽培をして花が咲いたとき、達成感を味わえると共に、自信を得られ、生活意欲が湧くことに繋がります。自分の園芸活動が他の人を喜ばせられたり、役に立ったりしていることを認識すると、社会の一員としての自分を見出しやすく、この社会とはつながりの意識が生きがいを生みます。

家庭菜園で責任感を得られる

共同作業でコミュニケーションの種になる

家族や友達と一緒に園芸活動をすることで、仲間がいるという安心感、仲間意識、連帯感が出来ていきます。家に帰って、散歩のときに見てきた花の種類や咲き具合を家族内での話のネタにすることで明るい話ができます。また、庭に咲いている花がきっかけで通りがかりの人と友達になれたりすることもあります。また、たまに訪問してくる孫に花の種類や、花に飛んでくる虫を教えられることで、孫の前で年長者としての役割を果たしやすくなります。

家庭菜園が会話のネタに

身体を動かす理由になる

花壇の植え付け作業によって、身体の筋肉を使って衰えの予防に繋がります。身体を動かすことで、体内の代謝・生理機能の維持・活性化が期待できます。そういったことで、ホルモン分泌を正常に保ち、免疫機能を強化することができます。また、どの花が咲いたかを見るのが楽しみで朝起きるようになり、定期的な朝や夕方の水やりで生活リズムを保ちやすく、体調も安定しやすくなります。

家庭菜園で体を動かそう

家庭菜園のポイント

庭がない家でもベランダのプランターや、虫が苦手であったり土を触ることに抵抗がある方にも室内での水耕栽培で家庭菜園が楽しめます。

プランターの場合だと、地植えと違って野菜を育てるのは、水やりや害虫対策で少しだけ工夫が必要です。

コンパニオンプランツと呼ばれる、よい影響を与える植物と一緒に育てることが大切です。例えば、トマトを育てるならバジルを一緒に育てましょう。水を限界まで与えないほうが美味しく育つと言われるトマトと、たくさん水を取り込むバジルは相性抜群なので、水やりの調整が楽になります。

水耕栽培は、バジルやイタリアンパセリなどのハーブ類をポリポットから取り出して丁寧に土を洗い落とせば、花瓶やコップでの水耕栽培に切り替えられます。また、最近では見た目もかわいい土を使わない水耕栽培セットがお手頃価格で始められるので、そちらからスタートさせてみても良いかもしれません。

誰でも簡単に始められるおススメ水耕栽培セット

まとめ

社会に貢献している、自分がいないと植物が生きていけないなどの責任感が高齢者の生きがいに繋がります。介護生活をしていると、共通の明るい話題作りが一苦労になることもあると思います。家庭菜園を会話のネタにして、明るいコミュニケーションで認知症予防をしていきましょう。取り入れられるところからぜひ試してみてください。

【参考文献】

人と植物とのかかわりを探る