高齢化の歴史と見る「老老介護の背景と現状、そして他人事にできない未来」
みなさんこんにちは。
今回は、「老老介護」の現状を背景と共にその発展、未来を見ていきたいと思います。
1960年代には5.7%だった高齢化率(65才以上の人口が総人口に占める割合)も、2019年には28.4%に達しました。(内閣府:令和2年版高齢社会白書)
団塊世代である1947~49年生まれの人口と団塊ジュニア世代である1971~1974年生まれの人口が後期高齢者になることで、2060年には総人口に占める高齢者人口の割合がピークになると言われています。(厚生労健局:2016年11月「日本の介護保険制度について」)
【老老介護】問題と解決策 -共倒れを防ぐために今日からできること-
(参考文献) 総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)
老齢人口の増加と介護に関する政策の背景
介護保険制度の創設前の老人福祉・医療の政策
1960年代には、わずか5.7%の高齢化率(65才以上の人口が総人口に占める割合)だったものの、2000年代には17.3%まで増加しました。これに伴い老人福祉政策が始まり、医療費の増大、老人の社会問題化による施設の整備と在宅福祉の推進、そして介護保険の創設に至りました。
年代 | 高齢化率 | 主な政策 |
---|---|---|
1960年代 老人福祉政策の始まり | 5.7% (1960) | 1962年 訪問介護(ホームヘルプサービス)事業の創設 1963年 老人福祉法制定 ◇特別養護老人ホーム創設、訪問介護法制化 |
1970年代 老人医療費の増大 | 7.1% (1970) | 1973年 老人医療費無料化 1978年 短期入所生活介護(ショートステイ)事業の創設 1979年 日帰り介護(デイサービス)事業の創設 |
1980年代 社会的入院や 寝たきり老人の 社会的問題化 | 9.1% (1980) | 1982年 老人保健法の制定 1987年 老人保健法改正(老人保健施設の創設) 1989年 消費税の創設(3%) ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十か年戦略)の策定 ◇施設緊急整備と在宅福祉の推進 |
1990年代 ゴールドプランの推進 介護保険制度の導入準備 | 12.0% (1990) | 1990年 福祉8法改正 1992年 老人保健法改正(老人訪問看護制度創設) 1994年 厚生省に高齢者介護対策本部を設置(介護保険制度の検討) 新ゴールドプラン策定(整備目標を上方修正) 1996年 介護保険制度創設に関する連立与党3党(自社さ)政策合意 1997年 消費税の引き上げ(3%→5%) 介護保険法成立 |
2000年代 介護保険制度の実施 | 17.3% (2000) | 2000年 介護保険法施行 |
以前の制度と介護保険制度の違い
- 自立支援
単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念としています。 - 利用者本位
利用者の選択により、多様な主体(民間企業、農協、生協、NPOなど)から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度になりました。 - 社会保険方式
所得にかかわらず、給付と負担の関係が明確な社会保険方式が採用されました。
介護保険の需要増加に伴う制度の充実化
老老介護の現状
これまでの15年間での介護保険対象者、利用者の増加が顕著になりました。
2000年の4月末から2015年にかけて65歳以上の被保険者数が約1.5倍に増加していき、サービス利用者数は約3倍に増加。また、要介護(要支援)認定者は、約2.8倍に増加しました。
高齢者の介護には、介護保険がなくてはならないものとして定着・発展していっています。
①65歳以上被保険者の増加
2000年4月末 | 2015年4月末 | |||
第1号被保険者数(65 歳以上の方) | 2,165万人 | ⇒ | 3,308万人 | 1.53倍 |
②要介護(要支援)認定者の増加
2000年4月末 | 2015年4月末 | |||
認定者数 | 218万人 | ⇒ | 608万人 |
2.79倍 |
③サービス利用者の増加
2000年4月末 | 2015年4月末 | |||
在宅サービス利用者数 | 97万人 | ⇒ | 382万人 | 3.94倍 |
施設サービス利用者数 | 52万人 | ⇒ | 90万人 | 1.73倍 |
地域密着型サービス利用者数 | – | 39万人 | ||
計 | 149万人 | ⇒ | 511万人 | 3.43倍 |
介護保険制度の改正と地域包括ケアシステム
平成26年に地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化を目的として、介護保険制度が改正されました。
地域包括ケアシステムの構築
高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるように、介護、医療、生活支援、介護予防を充実させています。
地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の充実
①在宅医療・介護連携の推進
②認知症施策の推進
③地域ケア会議の推進
④生活支援サービスの充実・強化
費用負担の公平化
低所得者の保険料が軽減しました。また、保険料上昇をできる限り抑えるため、所得や資産のある人の利用者負担が見直されました。
各地方自治体の地域包括ケアシステム例
福岡県:休日街かど相談
~商業施設を活用、専門職を配置して幅広い相談に対応~
【実施主体】福岡県(株式会社への委託)
【目的・経緯】
・家族の介護をしながら働き続けることができるよう、認知症を含む介護と就労に関する相談に
ワンストップで対応可能な「休日街かど相談」を実施しています。
【内容】
・家族介護者が訪れやすいよう、相談会場は商業施設の一部スペースに設置しています。
実施時間は第1~第4日曜日の 12 時~18 時です。(平成 29 年度)
・社会保険労務士、介護支援専門員、精神保健福祉士等が配置されており、
介護休業等の労務関係から、介護保険制度の内容、認知症の方への介護方法等、幅広く相談することが可能です。
・介護に関する初歩的なセミナーも開催しています。
・簡単なチェックリストも配付して、相談につなげる工夫も行っています。
愛知県岡崎市:働く家族介護者向け情報提供
~「仕事と介護を両立させるために!」親が元気なうちに準備しておこう!~
【出典】愛知県岡崎市「すてきな いきかた かんがえよう With You!フェスタ」パネル展示資料仕事と介護の両立(労働者向け)
【内容】
・平成 29 年 10 月 14 日~15 日に開催した「すてきな いきかた かんがえよう With You!フェスタ」
では、介護をするうえでの事前の心構えが重要なことから、「仕事と介護の両立」に関するパネル展を行いました。
「介護保険」「育児・介護休業法」「労働者向け」「事業所向け」の4種類を作成し、
「労働者向け」では、親が元気なうちに準備してくこと、親が倒れたり、
認知症が疑われた時の対応方法、仕事と介護の両立ポイントなどを紹介しています。
未来の老老介護
65歳以上の高齢者数は、2025年には3,657万人となり、2042年には3,878万人でピークを迎える予測がされています。75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には、25%を超える見込みです。
また、65歳以上の高齢者のうち、認知症の高齢者が2012年には15%の462万人だったのが、2025年には約20%の700万人に増えると思われます。世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯数も2010年には20%、2035年には28.0%に増加すると推測されています。
日本の人口構造の変化を見ると、現在1人の高齢者を2.6人で支えている社会構造になっており、少子高齢化が一層進行する2060年には1人の高齢者を1.2人で支える社会構造になると想定されます。
(参考文献) 総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)
まとめ
高齢化率の増加によって、在宅ケアの構築の必要性が出てきて、法制度も整ってきたのではないでしょうか。利用者がサービスを選べるようになり、多角的なサービスが発展しやすくなったように思います。
まだまだ増え続ける老齢人口ですが、祖父母、両親のことだけでなく私たち自身も今一度介護サービス、介護保険の見直しを行い、来る老後に備えていきましょう。
【参考文献】
厚生労働省老健局2016年11月「日本の介護保険制度について」
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