【介護と睡眠】高齢者の睡眠は体内時計を意識して時間よりも質を求めよう!

みなさんこんにちは。今回は、介護生活で誰もが一度は経験したことがある「夜になっても寝れない問題」に関してオススメ対処法をご紹介します。なぜ年を重ねると早起きになるのか、寝付けないのかでしょうか。理由とともに、今すぐできるオススメの安眠法として食事、入浴、アロマ、音楽をご紹介します。

この記事を監修して頂いた方
みきさん

介護福祉士7年目。グループホームで4年勤務した後、ユニット型特別養護老人ホームに移動。日々ツイッターで介護のノウハウを発信中

加齢とともに変わる眠れなくなる原因

年齢とともに睡眠も変化することをご存じでしょうか。よくご老人の朝は早いと言いますが、高齢者が早寝早起きになるのは体内時計の加齢変によるものです。これにより、睡眠だけではなく睡眠を支える多くの生体機能リズムである血圧・体温・ホルモン分泌なども前倒しになります。高齢者の方の早朝覚醒が始まったら、眠気が出たら就寝し、朝方に眠気が覚めたら無理に眠らず有意義に時間を使いましょう。

若者と高齢者の睡眠の比較
若者と高齢者の睡眠の比較

この結果から、若者と高齢者では睡眠の質も変わり、浅くなります。高齢者の睡眠脳波を見ると、深いノンレム睡眠が減って浅いノンレム睡眠が増えるようになります。そのためトイレに行きたくなったりちょっとした物音が聞こえたりするだけでも目が覚めてしまうようになります。

また眠気がないのにすることがなくて寝床に入っていませんか。高齢者ほど寝床に入っている時間が長いことが分かっています。寝床にいる時間が多いと、寝つきは悪くなりますし中途覚醒が増えてしまいます。結果的に眠れないまま寝床でうとうとする時間が増えて全体的な睡眠の満足度も低下してしまいます。介護生活になるとベッドから他の場所に移動することも難しいとは思います。その中で、食事や入浴、照明から改善できることをご紹介していきます。

年代別の入床・起床時間

年齢を重ねるごとに実際に眠れる時間が短くなること、寝床には眠気がしたら入ることを念頭に置いてみてください。

その他の睡眠不足の原因

  • 退職・死別・独居などの心理的なストレス
  • 不活発でメリハリのない日常生活
  • 狭心症や心筋梗塞による夜間の胸苦しさ、前立腺肥大による頻尿、皮膚掻痒症によるかゆみ、関節リウマチによる痛みなど
  • うつ病・認知症・アルコール依存症などの精神疾患
  • 治療薬の副作用
  • 若い頃には影響がなかった生活習慣(運動不足・夜勤など)や嗜好品(カフェインの入った飲み物やアルコール類)

高齢者がかかりやすい睡眠障害

特に睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群・周期性四肢運動障害・レム睡眠行動障害などは専門施設での検査と診断が必要になります。これらの特殊な睡眠障害にはそれぞれに治療法があり、通常の睡眠薬では治りません。これらの睡眠障害が疑われる場合には、日本睡眠学会の睡眠医療認定医へのご相談をすることが大切です。

入眠作用があるおすすめアクション4選

入眠作用を促すアクションがいくつかあるので紹介していきます。

リラックス作用のある栄養素を摂取する

しっかりとした睡眠には眠る前に脳や神経をリラックスさせる栄養素を多く取り入れることで、深い睡眠がとれるようになります。

高齢者の睡眠と食事

栄養素1:トリプトファン

睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の元となる物質の「セロトニン」を合成する栄養素として「トリプトファン」があります。

トリプトファンを多く含む食材:魚介類・鶏肉・卵・大豆製品(豆腐・納豆など)・ごま

トリプトファンを摂取しやすい食事
  • 鶏肉のカシューナッツ炒め
  • ほうれん草のおひたし(ごまと鰹節添え)
  • 納豆ご飯

栄養素2:グリシン

体温を下げる作用のある「グリシン」は、就寝前に体温が下がることで眠りに入りやすくなる人間にはピッタリの栄養素です。

グリシンを多く含む食材:カジキマグロやエビ・ホタテなどの魚介類

グリシンを摂取しやすい食事
  • ホタテの豆乳スープ
  • シーフードサラダ

栄養素3:ビタミンB1

ビタミンB1は、神経を沈静化させストレスから解放してくれる作用プラス疲労回復効果も持つ、睡眠効果を高めてくれる栄養素です。

ビタミンB1を多く含む食材:豚肉、うなぎ、玄米・そば・パスタ、そら豆、さつまいも、豆腐など

ビタミンB1 を摂取しやすい食事
  • 玄米入りのさつまいもご飯
  • 肉豆腐

おすすめ入浴法

1. 深部体温をコントロールする

人間の体温は朝4時が一番低く、19時ことに最も高くなるという一日の変動があります。満足した睡眠が出来ていない方の多くは、この高低差があまりありません。40℃の湯船に15分、首まで浸かることで、体の内側の深部体温が0.5℃上がり、寝るときに体温が急降下するため、入眠状態に入りやすくなります。

2. 体の末端と中心部の体温差をなくす

手足などの末端と胴体部分の皮膚の温度差を、湯船に浸かって温めましょう。せっかく温めた手足なので40℃のお湯に15分浸かった場合には、お風呂から上がって1時間以内にはベッドに入ることをおススメします。

3. 自律神経のバランスを整える

自律神経にとって体温調節がうまくできないと、乱れやすくなり眠れにくくなってしまいます。お風呂に入ることで自律神経の副交感神経が優位になり血流が良くなるので、眠りに入りやすくなります。

入浴のリラックス効果

介護生活をしていると、入浴介助をスタッフの方にお願いすることもあり上記のことを気にすることが難しい方には、足湯でも血行が良くなりリラックス効果になるのでオススメです。

【排泄と入浴】排泄と入浴の介助にオススメのアイテムを紹介

マッサージや足湯、お風呂で使える睡眠を促すアロマ

天然のアロマオイルには生体リズムを整える作用があり、香りをかぐことで朝になったら目が覚める、夜になったら眠りにつくなどの調節をサポートしてくれます。介護生活でも非常に取り入れやすく、値段もお手頃なことから誰でも簡単にトライできます。

日中はパワーがみなぎるものを。

  • ローズマリー:集中力や記憶力を高める効果があり、交感神経を刺激します。体を覚醒させて活動モードに切り替える手助けになるでしょう。
  • レモン:リフレッシュ効果があり、睡眠不足による元気のなかった心と体に意欲を持たせてくれます。
  • ペパーミント:頭の中をすっきりとクリアにする効果があり、冷静さを取り戻したいときに便利です。

就寝前は安眠作用のあるものを。

  • ラベンダー:安眠作用があり副交感神経を優位にしてくれます。アロマオイルが手元になくても、ラベンダーのドライハーブを詰めたアイピローでも代用できるでしょう。
  • オレンジ・スイート:考え事をしてしまい眠れないときにリフレッシュしながらも就寝を手助けしてくれます。

おすすめアロマキット

アロマ足湯のやり方

  1. フットバスや洗面器に38度くらいのお湯を入れる
  2. 発汗作用を促す天然潮をスプーン1杯にアロマオイルを1~2滴混ぜ合わせる
  3. 2を1に溶かし入れる
  4. ゆっくりとお湯の温度を確かめながら足を入れて、約10分間足湯をする

足湯をしている間は、ひざ掛けや、お湯が冷めるようでしたら注意しながら差し湯をして温度調節を図るといいでしょう。

アロマ足湯と睡眠

リラックス効果のある音楽

ある研究で睡眠障害のある高齢者(60~83歳)が3週間、就寝時にリラックスした音楽を45分聞き、毎週睡眠の質を観察したところ、参加者の睡眠の質の向上、睡眠障害の減少、日中の機能障害の減少が報告され、睡眠に音楽は効果的であることが分かりました。就寝時のルーティンに音楽を加えることで、リラックスできるでしょう。「睡眠用BGM」と検索すると、自然を感じれる音楽、宇宙を感じれる音楽、ピアノの音を楽しむ音楽など色々ありますので、ぜひ自分に合った音楽を聴いてリラックスしてください。

まとめ

寝床にいる時間の調整、早朝に起きても有意義に時間を使うことからまずは始めてみましょう。また、食事やお風呂、アロマ、音楽なども日常の楽しみが増えると思ってぜひ一度試してみてください。ご自分が興味を持ったものから始めて習慣づけてみてください。今日からゆっくり寝れることをお祈りいたします。

【参考にした記事】

【厚生労働省】高齢者の睡眠

【AROMA LIFESTYLE】高齢者の睡眠障害の改善に効果的なアロマテラピー

【PLUS THERMOS】15分の完全浴がオススメ! 不眠を改善するお風呂の入り方